「大丈夫だって言ってるでしょ?
それに……中沢さんは、そんなことするような人じゃないわよ」
うん?
あれ、今新カノさん……あたしのこと中沢さんって言った?
「いや、アイツああ見えて強ぇから、お前にまで4の字固め仕掛けてんじゃねーかって気が気じゃなかったんだよ」
女の子に対してそんな乱暴はたらくわけないでしょーが。重ね重ね失礼なヤツだなこの男は。
というひきつり顔で、"中沢さん" 発言への驚きも忘れてひたすら唖然としていると、いつの間にか隣に来ていたらしい先輩がポンポンと頭を撫でてくれた。
「お疲れ、りん。ちゃんとあの子の本音聞けたみたいだな」
あ、なるほど。
さっき言ってた「あとで分かる」って、新カノさんの本音のことだったんだ。
「まぁ一応ね。結局、ツンデレの枠からは出れずじまいだったけど」
「ぷっ…。そっか」
あたしの口から至極ナチュラルに飛び出た "ツンデレ" という単語に小さく吹き出し、先輩は可笑しそうな笑みを貼りつけてコクリと頷く。
申し訳なさげにこっちをチラ見する新カノさんを、お兄ちゃんみたいな顔で見守る彼は──
きっと、彼女があたしにお礼を言いたがっていたことに、とっくに気付いてたんだろうなぁ。
いやはや、お見それいたしましたよ。
どこぞの筋トレ魔神様にも見習ってほしいね、まったく。
そんなことを心の中でぼやきながら、あたしは沈みゆく夕日を苦笑いで見つめていた。

