この時間帯は混雑するものだと思ってたけど、意外にもさほど人は並んでおらず。
待ち時間10分程度で、目の前に2人乗りサイズのブルーのゴンドラが現れた。
「んじゃ、行きますか。先輩」
そう言って隣を見れば、彼はやけに真剣な面持ちで後方に視線を送っていた。
あれま、何事?
的な顔で眉を寄せつつ振り向くと、どことなく落ち着かない様子でもじもじしてる新カノさんが視界に入った。
どうしたよ。ここまで来てまさかトイレ?
それとも、めまいが再発したとか?
などと無い頭を懸命にひねっていると、心得顔のアッくん先輩がクスリと大人びた笑みをこぼし、トンッとあたしの背中を軽く押した。
「よし。せっかくだから、女の子2人で乗ってきな」
あの茶目っ気たっぷりのイタズラな笑顔でそんな台詞を吐き出して、困惑顔のあたしと新カノさんをぐいぐいとゴンドラの中へ押し込んだ。
「「 えぇ!? ちょっと待ってよ! 」」
珍しくハモった2人の声にビックリして、思わず顔を見合わせる。
と同時にゴンドラの扉がガシャンと音をたてて閉まり出し、「しまった」と慌ててそっちに顔を向けると──
「言ったろ、あとで分かるって。今がその時だから、ちゃんと聞いてやれよ?」
ニッと爽やかな笑みを浮かべた先輩の低い声が鼓膜を揺らし、ずっきゅんという胸の鼓動が自分の中から聞こえた瞬間、ふわりと体が浮くような感覚がした。
どうやら、イケメンフェイスに見惚れてる間(ま)に動き出してしまったらしい。

