はぁ……やれやれ。結局また先輩のペースに乗せられちゃったか。
多分、アッくん先輩には未来永劫3倍返しは無理でしょうな。
あたしのモットー潰(ツイ)えたり!
そんなことを思いながら心の中で親指を立て、ハハハと若干壊れ気味の笑みをこぼすと。
「へぇ、随分余裕じゃん。この体勢で笑ってられるなんて」
先程同様、意地悪な笑みを貼りつけてあたしを見据える。
いやいや全然余裕じゃねーですわよ。
アナタの目は節穴ですか。
な~んて命知らずなことは口が裂けても言えないので、あたしは自分でも薄気味悪いと思うこのナゾ笑顔をスッと引き締め、こみ上げる羞恥心に耐えながらじっと先輩を見つめ返した。
すると──
「なぁ、りん。ご褒美は?」
彼はその形のいい唇から、突然の意味不発言をぶつけてきた。
はて。ご褒美?
一体何のことやら。
キョトンと目を丸くするあたしを見て、先輩はわずかに唇の端をつり上げた。
「捨て身で姫を守った騎士(ナイト)に、何の褒美もないの?」
クスッと妖しく微笑む彼。
ドキドキ急上昇でありんす。

