そんなあたしに気付いてるくせに、耳元に唇を寄せて「しっかり掴まっとけよ」とか言ってのけるこの男は本当に悪魔だと思う。
おかげで吐き気なんぞ吹っ飛んじゃったよ。
「ヤダヤダ、ハズすぎて死ぬ! 今こそ下ろしたまえぇー!」
我ながら意味不な絶叫と共に足をばたばた。
が、当然逃れられるはずもなく……
「じっとしてろって。お姫サマ♪」
クスクス笑いつつのキザ台詞。
密かに胸キュンゲージ振り切りなうです。
「えぇ! ? ちょ…アニキ!!?」
「舎弟置いてどこ行くんスか!」
いつ舎弟宣言受理したんだよ、とまたまた内心ツッコんでしまったのはナイショ。
アッくん先輩は相変わらずの飄々とした笑顔で手を振って、
「俺、舎弟よりカノジョのが大事だから。悪いね~♪」
というハートずっきゅんな捨て台詞を吐いて、あたしを抱えたまま全力疾走。
ものすごい速さで遠ざかる不良3人衆の顔が、恍惚とした表情に見えたのは気のせいってことにしておこう。うん。

