「景、ありがとう。君の言葉は、君たちの存在はきっと僕にとって宝物だ」


彼の本音に、全員が釘付けとなる


景には

もうその言葉だけで充分で


転校の理由がなんであろうと

彼がどこへ行こうと


その言葉だけで彼を信じることができると思った


「景」

「なぁに?」

「これから先、君はきっと様々な困難に打ち当たる。景だけじゃくて、きっと皆んなも、僕も」


景は目尻に涙を浮かべたままキョトリとして爽馬を見た


「でも、忘れないで欲しい。僕だってずっと君の味方でいる。

この右も左も分からない世界で
何を、誰を信じればいいのか

何が本当なのか分からなくなる時がきっとくるだろう。

でも一つだけ本当なのは、僕が君のことを、この寮のことを大好きでいること。

それだけは、絶対に

絶対に変わらない


それだけ覚えててくれれば
僕は十分だよ」


景はもう一度
思い切り爽馬に抱きついて

ふるふると首を振った


「それだけじゃない。私は爽馬との思い出を、絶対にずっと忘れないよ」

「ありがとう、景.....」

涙が溢れて止まらなくて
前がよく見えない


ライがため息をつき、景を抱く爽馬の頭をコツンと叩いた


「バカ」

「ライ.....」

続くように市河にも頭を叩かれ、爽馬はうっすらと微笑んだ


「何かっこいいこと言ってんのって感じだけど、俺も、忘れないよ。この寮のことも、クラスで一緒に過ごしたことも」

「俺も!俺ら妖術科の仲だしさっ。忘れるわけないじゃん?」

咲夜には鼻の頭を突かれ、爽馬はビクッと目を瞑る

そして、最後に目が合ったのは

結斗だ


「景ちゃんも言ってたけど、君が男子寮Bの大切な一員であることは変わらないよ。また寂しくなったらいつでもおいで?」


彼らしい言葉だった


けれどきっと、みんな分かっている

「.....うん.....」