『咲夜がいなかったらきっと、僕は男子寮Bで誰と関わる気もなかった』

一緒に成長して


『にょりにょりです!』

『天突きです』

他愛のない会話もした


そして


『景が帰ってこないから心配して来た』

『景、結斗、危ないから下がってて』


一緒に戦った

力を合わせて助け合った


爽馬との思い出は尽きる事なく

溢れ出しては輝いて


胸をじわりと締め付ける


心から楽しかった

本当に大切な思い出だと


今になって思うのだ


そんな彼のためにできること

それはただ一つ


私たちにしかできないこと

それはただ一つだ


「ごめんね爽馬。不安じゃないはず、無いよね」

景は声を震わせた

「爽馬。いつでもここに戻ってきて良い、助けを求めたって、いいんだよ。その時はすぐ全員で駆けつける。男子寮Bはずっと、爽馬の居場所であり続ける。

だから安心して。安心して、爽馬の選んだ道を歩いてほしい。
この学校にいなくても、この寮にいなくても、爽馬らしく生きて欲しい。

みんな、ずっと爽馬の味方でいるよ」

「景ちゃん.....」

「景.....」

結斗と咲夜は顔を歪めて呟いた


彼女の言葉は、転校する爽馬の背中を押すものだったが

もっともだった


爽馬を引き止めるのは、きっと自分たちのためなのだ


ライと市河にも視線を向けられ

爽馬の桜色の唇は開かれた



「ありがとう、景」


と。