「だから私ね、爽馬の今回の決断、否定したくないんだ。
爽馬は何も考えなしに行動するような人じゃなく、強い意志を持った人だから。
たとえこの学校が大好きでも、この寮を大切に思っていてくれても、それでも爽馬が転校を選んだって事は、きっとそれが一番良い道で、爽馬が歩むべき道なんだよね」


伏せ目がちだった爽馬はハッとしたような顔で景を見て、そして、その綺麗な顔を歪めた


そんな彼に景はふわりと笑う



その笑顔とは裏腹に、心臓は引き裂かれるようだった


彼との思い出が頭の中を駆け巡って

一言一言を鮮明に思い出す


もうすぐ爽馬と一緒にいられる時間がゼロになると思うと、この時間がなによりも儚いように思えた


この透き通った肌が透明になって、細く美しいなめらかな髪が輝きを放って

今すぐにでも消えてしまうんじゃないか、なんて考えてしまうほどに


彼はどこかへ消えてしまいそうで

悲しくて

悲しくて


ただひたすらに悲しかった



『小高さんも、私が一緒に食べても良いんですか?』

『別に問題ないけど』


爽馬と、出会い



『じゃあ、寮は?』

『分からない。でも、あの寮の居心地は悪くない』


彼に近づいて


『..........ところてんが食べたい』


彼の心に触れ



『景、僕たちは納得してない』

『景がこうして自分と僕たちに嘘ついて一人で抱え込もうとしてるのも知ってるよ』


彼に助けられた