結斗は

きっと爽馬の転校の件にはもう触れない


それは彼を止めたいとか、そうじゃないとかではなく


自分の役目だとは思っていないからだろうと、咲夜と市河は思う


説得なら、咲夜と市河で十分

それで無理だったらそれまでの話で


きっと結斗は、爽馬との何気ない1日を変わらず続けていくと決めたのだろう


それも全て、爽馬のためだ



「ただいまー、景ちゃん」

「ただいま」

「ただいまー」

「ただいま」

四人が寮に入ると


キッチンから出てきて彼らを迎えたのはライだった


「え、お前らまだ帰ってきてなかったのかよ。部屋にいるんだと思ってたわ。景もそう思ってるけど」


ライの言葉に咲夜がリュックを下ろしながら頷く

「あー、景が女子寮とかに出かけてていない間に俺らが帰ってることたまにあるもんなー」

「今日は放課後、1組のやつらとサッカーしてて帰るの遅かったんだよ」

「俺も生徒会の仕事があったからね」

「あ、そ。てか飯できるってよ」


ライが右手を腰にあててそっけなくそう言った時

キッチンからはロールキャベツのお皿がのったトレーを抱え、景が出てきた


「おっ、ただいま景」

「「「ただいま」」」


いつもと変わらない彼らの元気なただいまの挨拶にも、景はなんとも言えないような顔をするだけだった

そんな景の目の赤い腫れに、彼らも気づく


爽馬は、ただじっと景を見ていた


彼女は、トレーをテーブルに置くと彼らに駆け寄る


そして


「おかえり」



今にも泣き出しそうな顔で




爽馬に抱きついた