そん風に思う景を、水穂は優しい瞳で見つめながら呟いた


「大きくなりましたね」

「……えっ?」


まるでお父さんのようなその台詞に

景は思わず友達に聞き返すように反応してしまう


「あ、ええと……」

「ははっ」


少し恥ずかしくなって赤くなりながら、景は水穂の言葉を待った


「まさか自分が教師になるとは思っていませんでしたが、あの小さかった笠上さんが高校生になっても寮母をやるとも思っていませんでした」

「わ、私もです……」


思い返せばいろいろあった入学からの六か月間

もしかしたら水穂先生は、私が考えているよりも自分のことを見てくれていたのかもしれないと、景は思った


その割には、彼とマトモに話したのは入学して今日が初めてだが


水穂は「せんせーい、こっちきてよーっ」と騒ぐ女子たちに、「なんですか?ちょっと待ってください」と返事をすると、スッと立ち上がって景を見た


「でも、私はあまり心配していないんです。きっと笠上さんは、寮母であって、やっと息が吸えるんじゃないかなんて見てて思うので」


「え……」


予想外の言葉をかけられてポカンとする景に、水穂はにこりと笑いその場から離れていった