ライは爽馬の走る姿を、冷静に眺めていた


バトンをパスしてトラックから出る時

彼の瞳が景を捕らえたのも

しっかりと見ていた


「爽馬は、変わったよ」

そんな突然の景の呟きに、ライと柊、鈴菜は横目で彼女を見る

ライは自分でも、その通りだと思った


「私、男子寮Bに来たばっかりのとき、爽馬が一番難しいと思ったんだよね。一番、何考えてるかわからなかったからさ」

「そう.....なんや?火野ライも難しそうやけどな」

「.....は?」


鈴菜と不機嫌そうに顔をしかめるライを見てクスクスと笑ってから、景は「ライは考えてることがわかるの。あ、こいつバカだとか、あ、こいつアホだとか。そんなことしか考えてないんだもん」

と肩をすくめる

「お前に限ってな」


ライは景をジロリと睨んでから、「で?」と話を促した


「爽馬は一番器用に自分の感情を操ってしまうから、一番不器用に感情が伝えられないんだよね」

「ああ」

「話しかけても素っ気ないから分かりにくいけど、爽馬は人と関と関わることを、楽しいことだと思うようになってるよ」