記憶の中の若い —といっても今でも十分カッコよくて若々しい人なのだが

そんな水穂先生を思い出しながら、景はもっと喋っておけば良かったかもしれないと少し後悔した



それにしても、先ほどから気になるのが何やら真剣な表情のライだ


彼は話を聞いているようで

(多分聞いてはいるのだろうが)

どこか自分たちとは違う方向に視線を向けている感じがするのだ


具体的に「どこ」とかそういうことではなく

まるで私たちには分からない、自分にしか分からない問題を抱えてるような顔で


「ライー?」

耳に髪がかけられ、白くて綺麗な耳を露わにした彼の横顔に、景はどうしたの?というような顔で呼びかけた

「..........ん?」


気が付いたようにライは景の方を向く

しかし彼は、景の意とはうらはらに

「ほら、爽馬の番が来る」


と向こうのトラックにいる爽馬を見た