結斗や爽馬も微かに反応した


「私たちのこと.....どこまで知って」

呆然と呟く景

二人きりだった市河と麻依を邪魔してしまった自分を睨んでいた彼らを思い出す


そんな彼女に市河はフフッと笑って首を振った

「あいつらは何も知らないよ。ただ.....風で舞った帽子を追って林の中に入っていった小椋を見つけてくれたのは景だって言っただけ」

「え.....」

市河に、よかったな、というような顔でポンポンと肩を叩かれ景は力強く頷く


悪狐のこと、自分たちのこと、全て話してはいけないことばかりで

麻依たちは知る由もない


だけど


「ありがとう」といってもらえた


「私は追いかけただけだけど.....そっか.....なんか嬉しいな.....」

「そもそも景ちゃんの嗅覚がなかったら麻依ちゃんも見つけられなかったしね」


隣で微笑んで言う結斗

「そうそう。千里眼を使うにしても景(能力保持者)の存在は結構な目印になったしな」

市河にもニヤッと笑って言われ、景は「よかった」と笑いかける

ライと爽馬も、相変わらず笑顔でいるわけではないけれど、どこか安心したような顔で景を見た


今日はとてもいい日だ


夜の空気を胸いっぱいに吸って景は思う



シベリアンハスキーであることが

少しだけ

少しだけ

誇らしくなったような気がする



少し涼しくなった

草の匂いのする夏の夜


誰が何を言うでもなく

彼らは学校に向かって歩き出した