ハルの言葉を

結斗は一瞬、心臓が止まるかと思うほど


愕然として聞いていた


以前聞いた、ライが学校に来る決意をしたエピソード


それと今のハルの話が

偶然にしては出来すぎているほど重なったからだ


結斗はライの話を思い出した


『—みんな結局、面倒くさい悩みを沢山抱えてるんだよ。多分。だってマトモに生きてるから—』


『—君が面倒くさい悩みを沢山抱えているのは、マトモに生きている証拠だって—』



『—授業中のはずの時間に、裏庭で昼寝してんだよ—』


『—授業サボって裏庭に行くと、たまに美音ちゃんが同じ事してたんだよね—』



そんな偶然があるのか


あの時のライの話に出てきた人は

景の姉、笠上美音だった!?

「景ちゃん」

結斗は、小さい声で呟いた


「なぁに?結斗」


いつもと変わらない、優しい笑顔で景が首をかしげる

知らず知らずに人を魅了する、自分も大好きな愛おしいその笑顔


結斗は息を飲んで、グッと手を握りしめた


「.....う、ううん.....ごめん。何でもないよ」

「そう?」

「うん」

「じゃあそろそろ帰ろうか」

その言葉に、雑談していたライたちも反応する

「お、気をつけて帰るんよー」

「おー、母さんに宜しく言っといて」

「りょーかい」

「「「お邪魔しました」」」


こうして男子寮Bの夏祭りは終わり


景はいつまでも見送る市河家の人達に大きく手を振りながら

元来た駅へと歩いて行った