「君よくスカウトされるでしょ!?ってかぶっちゃけアイドルとかモデルになったら絶対稼げるから」

「..........いや.....」

「なんで日向の寮こんな美男子そろってんのか意味わからんね。あいつも意外と女の子達に追っかけまわされてたりしてたけど、君ら格が違うもんな」

「格ですか.....?」


景がみんなのいる部屋に戻ると、ライが市河家のお姉様方に詰め寄られていた

結斗と爽馬も流れ弾をくらい


予想通りの展開である


「あ、景ちゃんお疲れ様。麻依ちゃんだっけ?具合はどう?」

市河姉、ハルに尋ねられ、景は微笑んで頷いた

「さっき目を覚ましたんですけど、ちょっと疲れてるみたいでまた眠りました。日向は麻依ちゃんのお友達を呼びに行ってます」

「そっか、本当、助けてあげられなくて..........布団用意するぐらいしか出来ずでごめんね」

「い、いえ、私は何も。みんなが助けてくれて」

「ううん、大変やったな。悪狐に遭遇するとか。ずっと前に狐が出たって聞いたことはあったんやけど。それに普通の女の子に被害があるとなると問題やね」


ハルが景に座布団を出してくれて、ペコリとお辞儀して景はそれに腰掛ける


ライは隣に座る景を見ながら

「で、なんであの子は雑木林の中に入ってったんだ?」

と尋ねた


景がさきほど麻依から聞いたことを説明して、皆してなるほど、と納得する


そして何も会話がなくなり

部屋が静かになったとき


カヅキは景たちを眺めながら

「はーー、私ももう一回あの学校戻りたいなぁ.....」

と呟いた


「まぁ、面倒くさかったけどね。学生って不自由だし。でも楽しかったよね、割と」

ハルも卓袱台に置かれているお菓子をモグモグと食べながら頷いた


大人になった時

今日のハラハラした出来事だってきっといい思い出になるんだろうと景は思う


だからこの一瞬一秒を大切にしたい

景は微笑みながら、ライ、結斗、爽馬の顔を眺めた


「景ちゃんは大人になっても、寮母やるの?」

ハルの質問に、景はうーん、と唸る


男子寮Bの3人がピクリと反応したことにも気付かず、景は笑って答えた

「かもしれないですね。未来の私が寮母を続けていたとしたら、それはもう寮母以外の生活が出来なくなっちゃったってことですね」

「なるほどね」

「あながち今もだよね、景ちゃん」

「そうかも」



くすりと笑う景に、カヅキは思い出したように言った


「まぁなるようになるよね。私が学校に在籍してたころ、美人な上にすっごい頭の良い先輩がいてさーー。その先輩、小学生の頃から弁護士になるっていう夢があって物凄く勉強を頑張ってきたんだけど、大学卒業後にその夢を変更したらしいんだよね」

「へーー」


その時、廊下から「あったあった」という声がして

市河の母、シヅキが入ってきた


「あ、お邪魔してます」

「お邪魔してます」

「お疲れシヅキー」

「お疲れ母さん」

「どうもーー」