爽馬と結斗は狐から庇うように並んで景の前に立つ


気を失った状態の麻依の前に構える狐と対峙し、彼らの表情は先ほどの穏やかなそれとは違っていた


「そっ、爽馬、結斗!どうか麻依ちゃんには、危害を加えたくないの、お願い!」

難しいお願いであることは分かっているが、景は二人の後ろ姿に縋るように頼み込む


そんな景に顔だけで振り返った二人は、微笑んで優しく頷いた


そして彼らが再度、狐の方に向き直った次の瞬間


狐は一瞬にして木の葉すら飛ばすような竜巻をおこし、景たち3人を巻き込んだ


「ひゃ」

地に落ちた葉や枝を巻き上げるような渦を巻く強風に、景はバランスを崩す


瞬時に結斗に抱きかかえられ、彼は軽々と持ち前の脚力でそのまま高い木の枝の上に飛び乗った


「ゆ、いと.....」

「少し高いけど、絶対に離したりしないから、力抜いて俺に任せていいよ」


そう言って景を安心させるように微笑む結斗

「ん............」

そして下を見下ろした彼につられて景も下を見ると、そこには立派な銀の耳と尻尾を生やした爽馬が立っていた


僅かに見える瞳は碧く輝き、八重歯が鋭く尖っている


.....初めて見る狐姿の爽馬だ

景はその美しさにおもわず息を飲んだ