「ねえねえ、見てよ爽馬!」


暑い日差しが照りつける夏休み真っ只中


景はソファに座って小難しい文学小説を読む爽馬に、じゃーん、ととあるものを突き付けた


晴れて男子寮Bの生徒となり横で腹筋をしていた市河も、何事かとこちらを見る


「にょりにょりです!」

「天突きです」


元気よくそれを紹介した景に即座にツッコミを入れると、爽馬はゆっくりとそれを手に取った


「おー、にょりにょりだ」

腹筋しながらこちらを見てそう言う市河に、景が「だよね!」と笑うと、爽馬はまたすかさず「天突き」と短く言う


「へー、それ天突きっていうんだ。さすが爽馬、よく知ってるね」



景がふむふむと感心しながら見ているのは、ところてんをグッとおしだす“にょりにょり”ではなく“天突き”なるものだった


「なんと貰ったんですね〜」

機嫌良さそうにそう言う景に、市河が尋ねる

「誰から?」

「寮母仲間のおばちゃんから」

「おばちゃんすげー」


そう言って笑う2人だったが、爽馬が真顔で景を見てから口を開いた


「まぁ、中身がなければにょりにょり?もできないと思うけどね」


こうして彼らは、ところてんを買いに出かけることになった