その日の夕方

男子寮Bで市河は男子寮Bへの入寮について、詳しい話を聞いていた


「そういうわけで、市河くんを男子寮Bに誘ったの」

「そうだったんすね」


どうして自分を男子寮Bに招いてくれたのか

男子寮Aを抜けることの許可は取れているのか



一連の話を景から聞き終え、市河はふぅと溜息をついた


「いやぁ、いっちーの驚いた顔撮ったから新聞部に売るかな〜」

「まず撮ったことに驚くよ」

「カメラ機能をあらかじめ用意しておくあたりホント咲夜は暇だよね」

「バカなんだろ」


男子寮Bの能天気な会話に苦笑いしながら、市河はなるほどなぁと状況を整理した


ヤナオカ先輩の件で、そこまで心配してくれたわけか......


確かにあれからヤナオカ先輩には気を付けたり避けたりするようにはなったが



俺も男だし、それぐらい我慢するけど......


市河は楽しそうに景の横で雑談する彼らを見ながら色々と考えた


「俺なんかが入って、四人はいいんすか?」

「もちろん」

「大歓迎!!」

「問題ない」

「あんなアリの巣みたいなウゼエ寮、脱出したほうが懸命」

「ライしっ......!」


即答で返ってきた彼らの答えに、市河は思わず吹き出して笑う


「っあははは!やっぱ男子寮B好きだわ俺」


そんな市河を見て、5人は顔を見合わせて笑った


景は市河君がこの寮に来てくれたら楽しくなるだろうなぁ、と思いながら彼を見る

「来てくれたら私たちすっごく嬉しいけど、すぐに答え出さなくてもいいからね。そんな深く考える必要はないけど、ちゃんと納得できたらどうするのか教えてほしい」


「えーっ、景、ここは無理矢理入れちゃおうぜッ」

口を尖らせる咲夜に、景はいたずらな微笑みを浮かべた

「じゃあ断られたら咲夜、男子寮Aに行って市河くんの部屋に入れてもらったら?」


そんな景の言葉に、なるほど、と結斗が頷く

「景ちゃんはここ2人がボーイズラブなことを見抜いたんだね。性癖はそれぞれだしいいと思うよ」

「いいと思うけどやることは他所でやれよ」

「お前ら最低だな」


咲夜は真顔で自分たちをくっつけようとする結斗とライにツッコミを入れながら、それぞれの頭を小突く


「布川、ごめん」


そんな咲夜に市河が一言そういうと、皆が一斉に笑い出した


「ははははっ失恋おつ」

「失恋咲夜。......っははははは!」

「はぁ?笑ってんなよ結斗ライ誰が誰に恋してんだバカ野郎」

「咲夜涙拭いて」

「あははははははっ失恋咲夜」

「ハンカチ差し出してんじゃねぇよ爽馬あと景笑いすぎ。いっちーもな、お前一番調子乗ってんじゃねぇか」

「っはははは!」


途中まで堪えていたものの、大笑いする市河を見て咲夜まで笑い出す


みんなの笑が静まったところで、市河は笑い涙を指で拭いながら「寮母さん」と口を開いた