しかし、身構える景の予想に反して


そのお願いはあっさりと通ってしまった





「許可しよう」

「えっ??」

「なんだその意外そうな反応は」


頼んでおいて、はなから断られるつもりでいたような景の反応に父は怪訝な顔をする


「だ、だって......。男子寮Bって、メンバー構成が意図的すぎるんだもん......偶然集まるようなメンバーじゃ......ないから..
....。

だから一般人......?の市河君は入れないかもしれないと思って......」


驚いたのか素直に胸の内を明かした景

そんな彼女に父は、ふぅ......と溜息をついた


「なるほど、そう、うすうす気づいていたわけか」


まるでその言葉が父が何かを知っていることを表すようで、景はパッと父を見る


「そうなの?」

「......それを知って、お前はどうする?」

「......どうもしないよ。でももしそれを、私が寮母であろうと、子供だから教えてもらえてないんだとしたら傷つく」


景がうつむきがちにそう言うと、父はゆっくりと首を振り否定した


「子供だから教えていない?それは無い」

「ほんとに?」

「あぁ、でも私からはなにも言わないよ。景が偶然何かを知る時が来たり、誰かから伝えられる時が来るかもしれないし、こないかもしれない。分からないけど景、決してあの子たちから目をそらしちゃいけない。ちゃんと寮母として見ていなさい」


その口調が何か諭すようで

景はなにも言えないままコクリと頷く


「ちなみに市河君の入寮を許可したのは、素直に君の話から市河君を守るにはその方法も有りだと判断したからだ。男子寮でよく見かけるが、市河君はとてもいい子だ。きっとすぐに男子寮Bにも馴染むだろう。

でも彼にも男子寮Aで築き上げてきた友人関係がある。彼の意を聞いて誘うように」

「分かった、ありがとう。じゃあ私、男子寮Bに帰るね」

「あぁ、頑張って」



何かがある

分からないけれど


でも......確かにそれは今関係ない

私は寮母の仕事を全うしよう



景はそう思いながら家を後にした