「寮母さん……俺のことは大丈夫です」
そんな市河の言葉に景はチラリと視線をやったが、それでも表情を変えずもう一度「離してください」とお願いした
真剣な表情の景に、ヤナオカは鼻で笑う
「はっ、そりゃそうだな、お前らのせいでコイツもこんな目にあってんだもんなぁ?男子寮にまで来て仲間を助けるとは、おめでたいわマジで」
所詮後輩の女子
ヤナオカの対応はバカにしたようなものだった
市河はごくりと唾を飲んで、景を見つめる
寮母さん……君はここに来ちゃだめだろ
こいつは危ないから……早く帰って……
しかし男子寮Bの生徒ではない彼らは知らないのだ
景が、寮母よりも寮母であることを
彼女がヤナオカに怯むことはなかった
「離しなさいって言ってるでしょ!」
突然ホールに響く景の大きい声に、誰もがそちらを見た
市河とヤナオカだけではない
一体この小さな少女のどこから、こんなにも周囲の目線をくぎ付けにさせるような力強い声が出るのかと
この圧倒的な威圧感はなんなのだと
全員が景に注目した



