目の前にいるヤナオカの視線にひるみそうになるのを堪え、市河は対抗するようにヤナオカを見続けた
「離して……くだっ……」
「謝れよ」
俺は何も悪くない
悪くないけど……やっぱ怖えわ、この先輩
やっぱここから逃げ出すには、頭下げるしか……
自分の胸元を掴むヤナオカの手をチラリと見てから、市河が諦めようかと考えたその時
「ちょっと、嫌がってるじゃないですか。その手を放してください」
今日聞いた覚えのある女の子の声がして、市河は目だけで声のほうを向いた
やはり、そこにいるのは男子寮Bの寮母だ
「寮母さん……」
驚いて掠れた市河のつぶやきに、ヤナオカがムっとした顔をする
チラチラとこちらを気にかけていた周りの生徒も、景に気づいてザワザワし始めた
「おい見ろよ!女子がいんぞ」
「ホラあの子だよ、男子寮Bの寮母やってる生徒。エプロンしてんだろ」
「えっ、じゃあなんでココにいんの?」
「もしかして今日からココの寮母になるとか?」
「まじで!?」
男子生徒たちがざわつく中だんだんと二人に近づく景を見て、ヤナオカは吐き捨てるように「お前か」と言った
「手を、離してください」



