男子寮Bで乾杯の音頭が取られた少し後のこと



市河は男子寮Aのロビーにある自動販売機の前にいた


ピッと自動販売機のボタンを押すと、ガコンガコンと音を立てて水のペットボトルが下に落ちる


市河よりも早く、別の誰かが後ろからそれをすばやく取った


「よぉ会長の弟」

「え......」


後ろを振り返ると、水のペットボトルを持って立っていたのは、機嫌が悪そうな男子生徒だった


この人は確か......


2年6組、ヤナオカ先輩......


話したことはない


しかし魔術科生徒会役員であり、自分と寮の部屋が近かったことから名前を覚えていた


この人、今日の昼に......妖術科の役員や男子寮Bの人たちに対してかなり態度が悪かったよな


市河が緊張した面持ちでヤナオカを見ると、彼はふっと嘲笑して市河に近づいた


「お前さ......男子寮Bの奴らとグルだったんだろ?」


......!!?

市河は愕然としながらゆっくり立ち上がると、目を大きく開いてヤナオカを見た


「そんなこと思ってたんすか......」

「は?」

「グルって........」


市河の反応が気に入らないのかヤナオカは持っていたペットボトルを放り投げると、さらに市河との距離を縮めた


「俺らがまるで悪者であるかのように男子寮Bの奴らに伝えたり、結局事を乱してんのはお前だろって話だよ」


「それは生徒会側が明らかにやってはいけないことをしているからですが!」


なんとか強気に言い返した市河にヤナオカはチッと舌打ちすると、胸ぐらを掴んで低い声で囁いた


「悪いこと?こうでもしなきゃどうやって魔術科を守る?............知ったような口聞くな一年。お前、ただじゃおかねぇぞ」


「......く......離せっ.....」