大人になったら、会社を保つための差別化のような考え方なんて当たり前になってしまう......?


爽馬の的確な考えに少し寒気を感じながら景はそっとソファに近づき、結斗の横へ腰掛けた


「......景ちゃん?」


「でも結斗も、そんなこと言われても困るよねぇ」


「ん?」


「だって、たくさんの従業員を従える会社で、会社のポリシーとは正反対の自分の意見を貫き通したら、きっとどこかの歯車が狂っちゃうし......。大変な思いをするのは結斗だけじゃなくて、たくさんの従業員たちだもんね」


結斗は隣に座る景の言葉にニヤリと笑うと、彼女の肩に手を置いて顔をぐっと近づけた


「ちょっ......」


景が少し身じろぎ、3人は驚いたのち、白い目つきで結斗を見た

「景ちゃんは物分りのいい、良い奥さんになりそうだね?」

「は......?」


景が困ったように動揺する横で、「物分りのいい良い奥さんは女慣れした奴を旦那にはしないと思いますけど......!?」と声を押し殺して呟いているのは咲夜だ


「ねぇ景ちゃんは、そうやって、会社を守るために会社の考えに従って働く俺を、かっこいいと思う?」


景は、首を傾げて問う目の前の結斗に息を飲んだ


自分の考えを押し殺して、会社のために働くこと

もちろん

「かっこいい......」


でも


「見たく......ないけどね」


はにかんで言った景に、結斗はおや?と目を丸めた


「だってどーせ、自分に嘘ついて何でもないような顔して笑うんでしょっ。そうゆー結斗が見たくないの」


自分に嘘ついて働く結斗じゃなくて


自分に嘘ついて、その苦しみを隠しながら働く結斗が見たくない



「この寮、そーゆー不器用な奴しかいねぇからな」

ジト目で吐き捨てるライの言葉を聞いたのか聞いていないのか


結斗は、はぁーー、と溜息を吐くと


ぎゅ、と景に抱きついた


「ひぁ......!」

「やっぱ景ちゃんが良い」