自分が人間と狼男の間に生まれたこと


だから狼ではなくシベリアンハスキー程度にしか変化出来ず、持っている魔力も弱いこと


昼間はコントロールが可能だが、夜になると意思と関係なしに変化してしまうこと


本当は公立高校へ通うつもりだったこと


この私立高校の本部の家系に産まれたこと


「そんな感じで、寮母をやらせて頂いてるんです」

景は肩をすくめた


受け入れてもらえるだろうか


すると、結斗に頭をくしゃくしゃと撫でられた


「ありがとう、言ってくれて」

「え......」

「景、お前ちゃんと生徒なんじゃん?偉いよ、こうやって寮母もやって、生徒もやろうなんて」


目の前に咲夜がしゃがみ、私を見上げながら言った


「そんな、褒められることなんか」


「まぁ努力は認めるけどさ」


「頑張られすぎても迷惑」


「ふふ、爽馬もライももう少し素直になったらいいんじゃない?」


「.....黙れ」


すごい......

私を、四人は受け入れてくれた......


「だからさ.....いつでも頼っていいし、苦しくなったら、俺らに助けを求めていいんだよ、景ちゃん」

「伊吹くん......」

「違う、結斗」


景の唇に冷たい人差し指をあてながら、結斗が囁く


「呼び捨てで。皆も景ちゃんも、その方が気楽でしょ?」

「だなー!俺も景って呼んでるし」

「どっちでもいい」

「ぼくも」


そっけないライと爽馬を見て、結斗がクスリと笑う


「大歓迎だって」

「あ?」


「ふふ」



思わず笑みがこぼれた


「結斗、咲夜、ライ、爽馬、ありがとう」


嬉しそうに笑う景を見て、四人の顔がほころんだ

「でも、ちゃんと寮母もしっかりやってみせる。精一杯やるね」


「おお、ヨロシク。だからさ、苦しくなったら俺らのこと、友達として頼れよ」






友達として


「友達って、だっせえ」

「何だよ、友達とかだせぇって反抗期の野郎感丸出しだから」

「まぁまぁ咲夜、反抗期なんだよ、ライは」

「調子のんなフェミニスト野郎」

「うるさいんだけど」



私たちは、寮母と生徒として



そして


生徒と生徒として



私たちの、賑やかで温かい寮生活が始まる