景は鋭いライの瞳に息を飲んだ

あぁ、またこの感じだ


ライは、もちろん結斗、咲夜、爽馬だってそうだけど

いつも私をこうして甘やかすんだ


自分が情けなるくらいに、守って助けてくれる



そしてライに関しては

それ以上の気持ちを感じ取ってしまう


私の考えすぎだと思いたいけれど

もしかして私のこと、なんて


「ライ......ライは優しいね。私もそうやって、かっこいい言葉さらりといいたいなぁ」


景は上を見上げながら言った


ライがその言葉をさらりと言ったかどうかなんて分からないのだから、自分でもずるいことを言っている自覚はあった


ライは黙って自分を見ている


きっと私は、ずっと寮母でいるためには何か特別な感情を持たない方がいいのだ


そのとき

「あら、笠上さんと、火野くんね」


保健室の入り口から綺麗な声がして、景とライはそちらに顔を向けた


「あ、先生!」

入ってきたのは以前優しく対応してくれた、美人の保健室の主


「ごめんなさいね、留守にしていて。また変化しちゃったのかしら」


そう言いながら景に駆け寄ってくる先生に、景は首を振った


「いえ、ちょっと生徒会に追われてまして、隠れてたんですよ」

言ってる自分でもどんな理由だと呆れたが、景は先生に正直に話す


先生の優しい笑顔には、つい心を開いて相談してしまうような何かがあり

さすが保健室の先生だなぁと景は感じていた


「生徒会に追われていたの?何か悪いことでもしちゃったの?」


キョトンとして首を傾げる先生を見て、ライは立ち上がりながら

「まぁ色々あって。そろそろ授業始まるし行くぞ」

と景を促す


「あ、うんっ」

スタスタと歩いて保健室を出ようとするライを追いかけながら

「気にしないでください、お邪魔しました!」

と景は笑顔で先生に言った


「そう?」

と首を傾げて私たちを見送る先生


「何かあったら、また来てね!」


心強い先生の言葉

そんな優しい声に振り返り頷きながら、景はライの背中を追いかけた