「......まぁ」


景に吐かせたと言ったほうが正しい気もするような......

などと思いながら、ライは頷く


そんなライに笑顔を向けてから、京子は真剣な表情で話し出した


「あの子にはね、実は4歳上の姉がいるの。その子もシベリアンハスキー、つまり欠如した人狼なのよ。

それが原因でずっと学校では、いじめ、とまではいかないけれど、ハブられてたみたいね。

それで、2、3年前に姿を消してしまったのよ。「探さないで欲しい」って手紙も残されてたし、今はもう大学生だから、警察も積極捜査はしてくれないし。全然あれから連絡が取れないのよね。ほんと、全部親が気づいてあげられなかったせいなんだけど。

だから景は、シベリアンハスキーであることが、とてもコンプレックスなのね。人に知られることをすごく怖がる。

景はクラスの子に、自分がシベリアンハスキーだって打ち明けてる?」


そういえば本人が大雨の日の夜に、震えながら言っていた

同じく大雨の日、姿をくらました姉のことを



ライは心の中で色々と納得しながら、いいえ、と首を振る


「そうでしょうね。だからきっと、あなたたちが景を受け入れていることが、あの子は嬉しくて嬉しくて仕方がなかったと思うわ」


京子はライに微笑みかけながら言った


景がコンプレックスを抱えていたとも知らずに、無理矢理言わせてしまった


景が断固としてシベリアンハスキーであることを自ら言わないことは感じていたが

そんなエピソードがあるとは知らず


自分たちは景に対して可哀想なことをしたかもしれない