景が男子寮Bに戻った、その次の日のことだった



マナが掃除機を片手に共同リビングへ行くと




景が

ソファに正座していた






おまけ 〜編み込みます!〜
(後日P131前に移動予定)




ちょっと何ぼーっと座ってるのよ、と声をかけようかとも思ったのだが


結斗が景の方に歩いてくるのを見て、マナは口をつぐんだ


「ありがとね、景ちゃん」

歩きながらそう言う結斗は、景が正座しているソファの前に座ると「よろしく」、と微笑んだ


「いーえー、任せて!」

景はニコリと笑って膝立ちになり、クシとヘアピンを顔の前で掲げる


マナは気になって2人に近づきながら話しかけた


「ヘアセットでもするの?」


マナに気づいた景が、結斗の髪をクシで梳かしながら「あ、斎藤先生」と微笑む


「景ちゃんに髪を編み込みしてもらうんです」

結斗が目線だけ動かしてそう言った


「そうそう、前はよくライにやってたりしたんですけど。結斗が今日は友達と遊びに行くらしくて」


「ふぅん」


なるほどね、マナは頷きながらその様子を見ていた

ライを初めて見たとき、確かに編み込みをしていたんだっけ


それがさらにライをカッコ良くしていて


この子(景)がやってあげてたんだと思うとなんだか悔しいわね


「そういえば先生、寮の門限とかちゃんと分かってます?」


唐突に景に言われ、マナは目をキョトリとさせる


「門限?8時半でしょ?」

「それは平日用だね。まぁ平日は学園外に出ちゃいけないことになってるからね」

マナの言葉に結斗が笑いながら答え、


「そーそー。土日は一応9時になっててさ、帰りが7時以降になるようなら夕飯をどうするのか寮に連絡入れないとめっちゃ怒られるんだぜ」


朝シャン上がりの咲夜がペットボトルを片手に話に加わってきた


「そりゃそうだよー、食べないなら用意しないし、とっておいて欲しいならラップしとくしそこは言ってくれないと」


結斗の髪をいじりながら景が不満げに言う


それを頭の上で聞きながら、結斗が微笑んだ


「じゃあこんどみんなで遊びに出かけようよ」

「じゃあって何だよ」


咲夜のツッコミと同時に、景が「お〜」と笑って

「いーねー、楽しんできてね!」

と元気に言う


「何でたよ景も来いって」

「私はいいよ〜」

「え?何で、景ちゃんがいないと皆にならないでしょ」


当然のように2人に言われ、なんか嬉しいなぁと感じながら、景は首を傾げた

「男子の遊びに女子がついてって遊べる?バッティングセンターとか行かれたら私応援しか出来ないけど」


「いやいや、女の子がいるのにそんなチョイスはしないよ」


「だな。じゃあカラオケとかいーんじゃね、カラオケ」


そんな調子で楽しそうに話している若い子たちを、マナは客観的に眺めていた


いいわね、青春してて。


「まって、俺カラオケ行ったら景ちゃんが知らないような洋楽やバンドしか歌えない......」

「んだよ、つまんねーな。じゃあゲーセン......とか」

「ごめん私ゲーセン苦手......」

「まじか、まぁ確かにうるさいしな」



なかなか女子男子どちらも楽しく遊ぶというのは難しそうだ


まぁ、無理に出掛ける必要も無いんだけどね......

景はそう心の中で呟きながら苦笑いする



そして、こんな感じで話は滞り


会話のラチがあかないまま

一週間が経ってしまった







「俺実は、狼」(結斗)

「......狼CO?」(ライ)

「ん、狼だったんだけど、この状況からして多分怪盗がすり替えて、俺、今村かな」(結斗)

「うわぁ、やべぇどっちだ.....!」(咲夜)


日曜日

男子寮Bは



「だからってなんで人狼ゲームなんですかね......」


パーティゲームで盛り上がっていた



「人狼ゲームじゃねぇよ、ワンナイト人狼な」

「知ってます!怪しい!結斗怪しい!」

「ひどいなぁ景ちゃん。人狼すり替えられて人間になってる可能性が大きいんだって」

「怪しい!」

「うるせぇな景。おい、人狼こいつなんじゃねぇの、こいつ夜になると狼になんだろ」

「さっきからそればっかり言ってるよね、ライ......!!!」



外に出ても、たいして楽しいことがあるわけでもない


と話し合いを通して感じた咲夜たちは

なぜか


なぜか!

日曜日の暇つぶしにワンナイト人狼を選んでいた


いや、これには絶対に悪意がある


私をみてクスクス笑っていたこいつら
絶対狼引いたら噛んでやる!

景は心の中で勝手に意気込みながら、瞳に炎を宿していた


「景ちゃん?あくまで一夜(ワンナイト)のゲームだから、噛むとか無いからね?
怖いこと考えないで」


「えっ、心の声漏れてた?」


まぁ、こうして皆でワイワイ遊ぶっていうのも、楽しいけど


景は楽しそうにあーだこーだ議論をかます皆を、満足そうに眺めた


そんな景を、ライは顔をしかめて指摘する


「景、以外と割とマジで人狼なんじゃねーの」


なんと。


「は?マジで言ってんの」、な表情で景はライを見てから、がばっと爽馬に抱きついた


「酷い!ねぇ占い師爽馬なんとか言って!」


「「「(抱きついた......!)」」」


「う......(重い)、僕別に景のこと占ってない、てか3分経ったうるさい黙って」



嫌そうな顔で爽馬にかわされた景は、しゅんとしながら座り直す


「それじゃ、せーので指差して投票ね」
(ワンナイト人狼の勝敗は、処刑したい人狼だと思う人を、せーの、で投票して一番票を集めてしまった人が人狼か市民かで決まるよ)


結斗が苦笑いしながら人差し指を立てたのに続いて、皆も人差し指を立てる


すると、いきなりここで結斗がニヤリと笑った

「ねぇ、市民が勝ったら狼が一日市民の言うこと聞いて、狼が勝ったら市民が一日狼の言うこと聞く、ってどう」


......え?


いきなりの提案に、皆、目を丸くする

そりゃそうだよね、そんな罰ゲーム


「乗った」

「えっ?」

「じゃあ僕も乗るよ」


......!ライも爽馬も乗るなんて......!

これじゃ私も乗らなきゃ、人狼かもしれないと思われるよね......!


しぶしぶ景は「じゃあ私も......」と呟くと、咲夜も「しゃーねーな!」と笑いながら言った


「じゃあ決まりだね」

結斗が満足そうに笑顔で頷き
こんどこそ、と人差し指を掲げる



「いくよ、いっせーのーで!」

五人の指が、テーブルの上で交わった



結斗➡︎景

ライ➡︎景

爽馬➡︎景

咲夜➡︎ライ

景➡︎ライ


「あーー!!!負けた!!!」


机に突っ伏しながら景が叫ぶ


「ガチで人狼かよ」

「おーーいーー景!!」

そして、咲夜も同時に机に突っ伏した


「えっ、何咲夜、咲夜人狼なの!?」


がばっと景が起き上がると、「僕の人狼と咲夜の怪盗が入れ替わってるね」と結斗が嬉しそうに言った


「もーーー結斗仲間だったじゃん裏切り者ーーーー!」


こうして、人狼であった景と咲夜の負けが決定

2人は後日、結斗、爽馬、ライの一日召使いになることになったのである