そのころの男子寮Bは、まるで葬式のような空気に包まれていた


「......マジで明日まで何も食えねんじゃね」

「うるせぇ空腹加速させるようなこと言ってんじゃねぇ」

「でも、本当に雨落ち着く気配ないよ」


咲夜、ライ、結斗は
共同リビングにてぐったりとしている


それもそうと、本日の12時、つまり9時間ほど前から何も食べていないのだ


育ち盛り食べ盛りの男子には拷問であろう


「......油揚げ......いなり寿司......ネズミの天ぷら......」

「おい!爽馬しっかりしろ、好物呟いたって自分苦しめるだけだ!」

「え、ネズミの天ぷら好物なの......」

「てめぇだって汚ねぇ血吸うのが好きじゃねぇか」

「汚い血はいらないよ......」


もう空腹すぎてお腹すら鳴らない

結斗はライに反論するのもめんどくさくなり、そのままソファに寝転んだ


「そうよ、そうやっていっそ眠ったら楽だと思うわ」


しばらく黙ってテーブルの椅子に座ってた斎藤マナにそう言われ、結斗は苦笑した


爽馬が不機嫌そうにマナを見る

「まず君がご飯を用意してればこうはならなかったんだけどね」


「そんな怖い目で見ないでよ。台風なんだもの、しょうがないでしょ、ワガママ言わないで」


マナはカラカラと笑って足を組んだ


「それに、お腹が空いてるのは私も一緒」


そのとき、寮のドアをドンドンドンと叩く音が聞こえた


「風?」

「誰か来たんじゃ無いか?」

「こんな時に?」

「どうだろうね、見てみるね」


結斗がドアまで行って、ドアスコープ(覗き穴)から外を見る


「......え、景ちゃん!?」

「!?」

「え」

「まじかよ」



そこに立っていたのは、紛れもなくレインコートに覆われた景だった