奇跡の歌姫【上】




これは、歌いたくない。



…歌えない。



「…愛歌、大丈夫?」



私の手を握って、咲ちゃんがそう言った。



顔を上げると、咲ちゃんが心配そうにこっちを見ていた。



「大丈夫、大丈夫。ごめんね、咲ちゃん。大丈夫だよ。」



自分に言い聞かせるように、そう言った。