「桑原君さ、……まぁ、いいや。
悪いけど、ちょっと桜かりるね?」
声の主はやっぱり榎本先生で。
相変わらずの笑顔を楓君に向ける。
だけど、…どこか不機嫌っぽさが滲み出てる…ような…。
「え…せんせっ?!」
榎本先生は楓君にそう言うと、私の腕を掴んだ。
「じゃね。」
楓君に軽い挨拶をして、私は榎本先生と保健室を出た。
***
「先生っ…!!ちょっと…離してください…!!」
拒む私なんかお構い無しの先生は、速く歩くことを止めない。
気づけば、もう使われていない第二事務室の前へと私は連れてこられていた。
第二事務室の中へと入ると、先生は私を抱き締めた。
「桜ちゃんごめん…。俺、嫉妬しやすいひとだから…桑原君といるって聞いて、我慢出来なかった。…ごめんね。」
先生って嫉妬しやすいんだ…。
意外な先生の一面を見て、胸が高鳴る。
…楓君には何て謝ろうかな…。
そう頭の中で考えるのに、一瞬にして先生の事が思い浮かぶ。
ダメだ…先生の事しか考えられない…。
「…大丈夫です…。
それよりも、私の事呼び捨てで呼んで良かったんですか…?」
「それも、嫉妬心から。
桑原君は俺と同じだから。…桜ちゃんの近くにいることができる桑原君に負けてらんないなって思ったんだ…。
…ほんと、子供っぽくてごめん。」
楓君が先生と同じってどういうこと…?
それより、
そんな理由で、桜って呼んだんだと思うと、何か自然と笑えてくるな…。
…性格も可愛らしいんだな…
先生はごめんって謝るけど、別に怒ってなんかない。
ただ、びっくりしただけ。
「俺、桜ちゃんの事になると、けっこう必死だよね。」
フッと微笑む先生はどこか安心してるようにも見えた。



