~Special Short Story~




「あら、キザだね~」


「今日だけは特別に、ね」


その花を丁寧にラッピングしてもらう。


「はい。バースデーシールも貼っといたよ」


「ありがとうございます」


「素敵な誕生日になるといいね~」


そして、会計を済ませて花屋を出て、駐車場まで早足で向かい、そそくさと愛車に乗り込んだ。


やっぱりこの格好は恥ずかしい。


なんて思いながら助手席に花とプレゼントを置き、キーを差し込んでエンジンをかけた。


「よし、今から行くぞ」


愛しの彼女の家へようやく向かえる。緩む口元を左手でおさえながら、右手でハンドルを回し、アクセルを踏んだ。


俺の家から麻央の家まで車で30分。なかなか近い距離ではない。でも、麻央の家に向うこの時間は、麻央のことを考える時間に費やせるから、苦にならない。


麻央の家に着くのは19時前だろうし、さすがに家に帰って来てるよな?いや、友達と遊んでたりして……!?


実はというと、今日麻央に会う約束はしてない。だからもしかしたら、タキシード姿を見せずに帰ることになる可能性もある。