「……なお」
尚也という俺の名前を、いつもの呼び名で呼んでくれる麻央。次に言われる言葉が怖くて、反射的にギュッと目を閉じた。
「最高じゃん。ありがとう」
え?
拍子抜けで目を開けると、バラを抱えた麻央が優しく笑って俺を見ていた。
「もうビックリして言葉が出なかったよ」
「そ、そうか?」
「誕生日だし、会いに来てくれるのは何となく予想できてたけど、これはないでしょ」
あれ、やっぱり引いてる?
「……キザ過ぎ。こういうの初めてだっての」
そりゃ、これやってる奴いたらビビるって。
「やっぱり引けない。これ嬉し過ぎんね」
麻央がはにかんで笑う。
薄暗いからあんまり顔の表情は見えないけど、街灯の光で少しだけ麻央の表情が分かる。
笑ってる。
麻央が笑ってくれた。
やべ、なんか視界がボヤけてきた。
「なおが泣くわけ?」
「だって、お前がっ、麻央がこんな姿見ても喜んでくれっからっ、なんか目から出てくんだよ」
今気づいたこと。
タキシード姿にバラよりも、泣く俺の方が情けねぇ。


