「ねぇ、ちょっと」
「あと30秒待って」
車の窓を鏡代わりにし、自分の身なりを整える。夕日が沈んだ後だから、薄暗くてよく見えねーな、これ。
目を瞑る麻央の前に片足をつく。そして花を背後に隠して準備完了。
「麻央、いいよ」
「もう長……え?何?」
目を開けた麻央は、目を丸くして俺を見る。
「ちょっと順番が狂ったんだけど……えっと、コホン。
…………麻央、誕生日おめでとう」
そう言った後、後ろに隠していた花を……いや、1本のバラを麻央に差し出す。
「ちょ……え?何コレ」
「麻央の誕生日だし、ちょっと頑張ってみた」
タキシード姿で1本のバラを差し出す……俺。傍から見れば超変人。不審者扱いされてもおかしくねーけどな。
「あ……うん」
ゆっくりと俺の手からバラを受け取る麻央。
あれ?それだけ?
まぁ、普段から大袈裟にはしゃいだりする奴じゃないけど、なんかこう、もっとリアクションないのか?


