気づけばキミと恋に落ちて

そっちか。って、そうだよね。恋愛経験の少ない姉が、タラシを気になってるって、弟は心配するか。


「いや、実際わかんないよっ。ただ、口調が命令口調だし、オンナの人に慣れてるなって感じただけだから…」
「あー、そういうこと。はるは、恋愛に関しては経験浅いんだから騙されんなよ?」
「……うん」


なんでわたし弟に言い聞かされてんの⁉︎


いや、まあ、仕方ないのか…。


「で、もう一人はどういう奴なの」
「え?」
「はる〝一人は…〟って言ってたろ?なら、もう一人いるんだろ?」


陽ちゃん、ちゃんと話聞いてたんだね。


「うん…もう一人は、会社の上司なんだけど」
「そっちのほうが、はるにはイイんじゃねぇの。会社の人間ならある程度、わかるんだし」
「うん、でもね。既婚者、」
「却下」


わたしが最後まで喋り終わる前に、陽ちゃんの凛とした声がバッサリ落ちてきた。


「や、待って‼︎」
「待たねぇよ。いくら姉貴でも不倫するのは反対だかんな‼︎」
「いや、だから‼︎そうじゃなくて‼︎なにか感情があるとすれば、ムコウのほうだからっ」
「は?」


ググッと一瞬、陽ちゃんの眉間がブルドッグのようになった。