気づけばキミと恋に落ちて

全体に含ませたら、二十秒ほど蒸らす。


本来なら、小さな〝の〟の字を書くように注ぎ、三分の一程度減ったらまた注ぎ、最後に様子を見ながら注ぐのだけれど。


それは優雅な休日にやれば、いいことで…。


〝の〟の字は無視して、お湯を注ぐ。


あー、イイ香り。この珈琲の香りがスキ。


狭い空間に、ふわっと香る独特な癒し。


癒されれるのは、わたしだけかと思っていたら、どうやらみんなリラックスできるみたいで、ウチの会社の面接では珈琲がスキかどうかも聞くようになったとか。


新しく入った新人の子が、笑って話してくれた。


と言っても、毎年新人さんが入ってくるわけじゃなくて、誰か辞めた時に募集をかけるから、そんなに面接をしてるわけじゃないんだけど。


「お待たせしました」
「お。ありがとう。うん、今日もイイ香りだね」