気づけばキミと恋に落ちて

歩き出して数分。特に会話もなく、ただ腰に添えられた手の部分だけが、やたらと熱い。


名前を聞かれることも、年齢を聞かれることもなく、ただわたしのヒールの音だけが夜の街に響く。


「あのアパート、です…」


そうして、わたしのアパートに着いてしまった。


「意外と普通だな」


はいっ…⁉︎今、なんと…?〝意外と普通〟ってなによっ。


どんな家を想像してたんですか⁉︎


「期待に添えられずに、申し訳ありませんでした」


こうなったら、いつも会社で謝るような謝り方してやるんだからっ。


わたしが軽く頭を下げると、頭上から「ぷっ」と吹き出す声が聞こえ、思わず顔を上げた。