気づけばキミと恋に落ちて

「………ない、の」
「あ?なに、聞こえなかった」


陽美の声は、さっきより聞き取れないくらい小さくて、聞き返した。


「……だからっ。キス……以上の、経験がないんだってば…」
「は?」


今度は、しっかり聞こえた。聞こえたけど…。


「……だからっ。三十一にして…未経験、なんだってば…」


いや、うん。確かに、驚いたけど。


「なぁ、話ってそれだけ?」
「そ、それだけって…。わたしにとったら〝それだけ〟で済ませるようなことじゃないのっ」
「あー、いや、悪りィ。オレが言いたかったのは、そういう意味じゃなかったんだけど…。陽美の話って、ソレなんだよな…?」
「え?うん、そうだよ…」


あー、マジで焦ったぁ。正座したままのオレは、そのまま布団に頭を付け、深い溜め息を吐いた。


「ホント、寿命縮まったわ…」
「え?」


陽美は不思議そうな顔で、オレを見る。