オレを呼ぶその声は、どこか震えていて、泣いてるようにも感じた。


案の定、泣いてるのか聞くと一気に溢れ出したのか、オレを呼ぶ声。


陽美に〝会いに行く〟と、それだけ告げると電話を切り、旅館の中へと急いだ。


「すみませんっ、先ほど電話した坂崎ですっ」


フロントに乗り出すように言葉をかければ、すぐに対応してくれた女性スタッフ。


「吉岡様の婚約者様ですね。お部屋は六百五号室になります」
「ありがとうございますっ」
「あ、坂崎様っ」


足早に陽美の元へ行こうとしたオレを、先ほどの女性スタッフに止められ振り返った。


「あの…実は…」


そう言って、夜起きた出来事を話してくれた。


「女性ですし、こういうことは自分から話しにくいと思いましたので…」