「花ゆらら」
「は?」
「はるちゃん、多分一人で行ってると思います。もし、ただのケンカならと思って。有給まで取って行くくらいだから、ただのケンカとは思えないけど」


有給取ってまで温泉……それは、ホントに一人で行ったのか?


あの日、一緒にいたオトコと行ったんじゃねぇのか?


「他のオトコと行ったっていう可能性は、ないです?もしそうだとしたら、オレなんかが行っても、」
「それはないんじゃないですか?はるちゃんが、そんな人だとでも言うんですか?」
「あー、いや、ワルイ…」


あー、ダメだな。陽美のことになると、余裕がなくなる。


今は〝店員と客〟だぞ。タメ口なんかきくなよ、オレ。


いくら陽美のこととはいえ、ここは店なんだから。


「いえ。今日は、このことを言いに来ただけですので。今から歌う気分ではないので。また、フラッと来ますね」
「そう、でしたか…。わざわざ、ありがとうございます。また、お待ちしておりますので」


頭を下げ、見送る。彼が店から出て行ったあと、スマホを取り出した。


花ゆららって、どこだよ…。そう思いながら検索をかけると、すぐに出てきた。