「あー、オレもさ温泉行きたいなぁ、って思ってて。はるちゃんのオススメ、聞いときたいなってさ」


なんだ、そういうことか。ビックリした…。


「うーん、わたしがスキな旅館があってね。花ゆらら、って知ってる?」
「花ゆらら…?」
「うん、車で二時間くらいかなぁ。あ、ほら。ブルームーンって、小さな遊園地あるの知らない?あの近くなの」
「あー、わかった。でも、はるちゃん運転するっけ?」
「ううん、車持ってないし。いつもバスで行ってるよ」


免許は持ってるけど、近くに電車走ってるし、そうなると車はいらないんだよねぇ。


あったら便利なんだろうけど。


「バス、かぁ。で、明日はどうすんの?」
「え?あ、明日ねっ。うーん、まだ決めてないんだよねぇ…」


あっぶない。まさかそこ、突っ込まれると思ってなかった…。


「ふーん。まぁ、そういうの決めるのも楽しい旅行だしな」
「う、うん。そうだね…」


このまま、この話をしてるとゼッタイ、ボロが出るっ。


「さ、さてとっ。わたしも、掃除しようかなっ」


なんて、わざとらしく言うと、やっさんのトナリを通りすぎる。


もう、誰にも突っ込まれませんように…。


ただそれだけを願って、一日を乗り切った。