わかってて言ってるのかは謎だが、時々リズはオレがロボットだということを忘れてるんじゃないかという気がする。

 それにしても、このグルグルした感覚はなんとかならないものだろうか。
 額を押さえて俯くオレに、リズが助け船を出す。

「あなたの目が回る感覚ってよくわからないけど、検索条件を指定して閲覧対象を絞り込んでみたら?」

 そっか。グルグルしている全体を見るより一部だけの方がマシかもしれない。

「やってみる」

 リズの助言に従い、バージュモデルの盗難事件にデータを絞ってみる。確かに劇的なほどグルグル感がなくなった。

「すげぇ! グルグルしなくなった。ありがとうリズ」
「そう。よかったわね」

 満足げに微笑んで、リズは再び仕事に戻った。まるで我が子の成長を見守る母親のようだ。

 こういうときは、やっぱり”我が子”であるロボット扱いなのかな? と思う。
 まぁロボットとしては、オレって生まれたての未熟者だし。自分自身の機能も完全に把握しているかどうか怪しい。

 改めて絞り込まれたバージュモデル盗難関係の捜査データに目を向ける。全部で七件。内二件はオレが捜査に関わった事件だ。
 盗難に遭ったのは中古ロボット販売店が最も多くて三件。他はカベルネも含めて商利用している店、貴族や一般住民もいる。
 被害者には中古のバージュモデルを盗まれたということ以外に共通点や繋がりはない。

 中古ってことがミソのような気がする。

 オレは中古販売店のデータに注目した。販売店なのでたくさんロボットを扱っている。盗難時点での取り扱い商品情報では、盗まれたロボット以外にもバージュモデルはいた。転売目的ならなるべく新しい方がいいはずだ。ところが犯人は、他にいた新しいロボットより、あえてそのロボットを選んで盗んでいる。
 だからリズがヤバイ記憶でも探しているんじゃないかと思ったのだろう。
 記憶と人格が破壊されているのは、探った形跡を消すためだけではないかもしれない。

 中古といっても、どのくらい古いものなんだろう。

 バージュモデルが最初に生まれたのは八十年前だ。さすがにそんな昔のものはあまり残っていないとは思うが……。
 なんとなく疑問を抱いて、盗まれたロボットの製造年を並べてみる。

 あれ? もしかしてビンゴ?