班長も判断に迷ったらしく、通信端末を取り出した。
「総員待機。二課長に問い合わせる」
みんなが顔を見合わせている間に、班長は端末を操作して二課長に指示を仰ぐ。少しして通信を終えた班長がひとつ息をついて、こちらに厳しい視線を向けた。
「さらわれたのは間違いなく伯爵家の令嬢らしい。特級の箝口令(かんこうれい)が敷かれた。令嬢の正体については他言無用。彼女の身の安全を最優先しろ。特にシーナ、彼女を差し置いてシャスを守ったりするなよ」
「え……」
それはオレの意思ではどうにもしようがない。ふたりが同時に危険にさらされているなら、絶対命令が働いて、オレは人間であるシャスの命を優先してしまうだろう。
それじゃ、初仕事の時の二の舞だ。
けれど犯人がヒューマノイド・ロボットである以上、オレが捜査から外れるわけにはいかない。オレは捜査員の危険を軽減するために投入された備品なんだから。
班長の命令に背くことなく、仲間の身の安全も確保するにはどうしたらいいのか。
オレが考えあぐねていると、頭の中にリズの通信が入った。
「シーナ、この間教えてあげたでしょう?」
「あ、そうか」
オレが考え込んでいる間に、班長はてきぱきと令嬢救出作戦を組み立てて次々に捜査員の配置を指示する。班長がオレを呼んだ。
「シーナ、さっき見た令嬢の様子はどうだった?」
「落ち着いた様子でした。特に拘束されてもいません。横を向いていたので表情ははっきりわかりませんでしたが、被疑者ロボットと言葉を交わしているようでした」
「そうか。おまえは先陣だ。グレザックと組んで部屋に突入しろ。管理会社からマスターキーを預かっている。生体認証なしで扉が開くはずだ」
そう言って班長は板ガムのような形状のカードキーを手渡した。そしてオレの鼻先に人差し指を突きつけながら釘を差す。
「いいか。くれぐれもロボットを破壊するなよ」
「はい」
「よし。総員速やかに配置につけ」



