「名前はリズがつけたの?」
「いいえ、ラモットさんよ」
「班長!?」
「ラモットさんがマスターなのよ」
「なんで!?」
「私がふたり分のパスコードを管理すると、間違えたりするじゃない。職務の都合上、ラモットさんが適任なのよ」

 そりゃあそうだけど。

「よく了承したなぁ」
「そうね」

 呆気にとられるオレに、リズはクスリと笑う。

「ダレムって名前ね、二課長が言ってたけど、ラモットさんが忘れられないロボットの名前なんだって」
「あぁ、あいつか」
「知ってるの?」

 意外そうに尋ねるリズを、オレは得意の天使の微笑みで躱した。

「ヒミツ。班長はオレに知られたくないことだから、知らないことにしておくって二課長との約束なんだ」
「えーっ? 気になるじゃない」

 不服そうに口をとがらせたが、リズはそれ以上しつこく追及はしなかった。

 班長の心境の変化はなにがそうさせたのかは不明だが、今後ダレムといい関係を築いていくことを願う。
 あいつの名前をつけたってことは、あいつの分まで長生きしてほしいってことなんだろう。

 ダレムとリズと三人で、いつもの味気ないサプリ昼食を終えたとき、久々に聞くあのメッセージが流れた。


——緊急指令。ラフルール商店街にて、ヒューマノイド・ロボットによる強盗事件発生。特務捜査二課の捜査員は直ちに現場に急行してください。


「行きましょう、シーナ。仕事よ」
「了解」
「ムートン、ダレム、留守をお願いね。トロロンと遊んであげて」
「了解しました」
「カシコマリマシタ」

 ムートンとダレムとトロロンを残して、オレとリズは研究室を後にした。
 廃品回収されないように、営業成績あげないとな。


(完)




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バージュ博士の若い頃に興味のある方は「バイナリー・ハート」をぜひどうぞ。