二課長が一番奥の席からにこにこしながら手招きする。

「シーナ、正式な辞令が出たよ。昨日のはやっつけの略式だったからね」
「昨日の?」

 そういえば、フェランドがオレのことを正式な捜査員だって言ってたっけ。略式だけど、辞令が下りてたんだ。なんでわざわざそんなことしたんだろう。
 二課長は苦笑しながら真相を明かす。

「強行突入には差し迫った明確な理由が必要なんだよ。リズに関しては曖昧だったし、ロボットに戦闘を命じたことは差し迫った理由としては弱いしね。裁判で指摘されないように、突入前に略式な辞令を交付してもらったんだ」

 なるほど。オレが備品のままだと、やっぱり差し迫った理由としては弱いんだろうな。

「グリュデ氏については、以前から一般捜査二課の方で要注意人物としてマークされてはいたんだ。ほら、君がラモットくんと聞き込みに行った事件があっただろう。あれを含むバージュモデル盗難事件だよ」

 やっぱりグリュデの仕業だったのか。まぁ、オレごときが勘づいたくらいだから、プロにはわかりきってたんだろうな。

「怪しいのはわかっていても、しっぽを出さなくて歯がゆい思いをしていたらしいよ。君には囮になってもらった形になったが、おかげで逮捕できた。これからも、正式な捜査員としてよろしく頼むよ」
「はい、改めてよろしくお願いします」

 差し出された手を握り返すと、二課長は満足げに頷いた。

「事務室に君の席を用意したから、今後はなるべくここにいるようにしてくれ。シャスくんの隣だ。私は別にかまわないと思うんだが、局内の風紀がどうこうと言う人が何人かいてね」
「風紀?」
「じゃあ、私は記者発表があるから、あとはラモットくんかフェランドくんに聞いてくれ」

 そう言って二課長は忙しそうに部屋を出ていった。