とはいえ、やっぱ音声通信はマズいよな。思い切り監視されてるし。
 いつも捜査中にリズがやってる、オレのモニタリングシステムに気づいてくれたみたいだからいいか。
 わざわざ知らせなくてもオレの行動や見たこと聞いたことは全部把握できてるはずだし。

 リズの命令が無効になるのを見計らったようにモニタリングシステムが起動したから、たぶん二課長はオレがどこにいるのかわかっているみたいだ。

 守衛ロボットに案内されて壁の内側にある敷地に入る。中には二階建ての白い建物が大小二棟前後に並んでいた。
 手前の小さい棟と奥の大きな棟は二階が筒のような渡り廊下で繋がっている。いずれも窓はあるもののマジックミラーのようになっていて、外から中を見ることはできない。ちょっと材質をスキャンしてみたら、結構ハードな強化ガラスのようだ。
 機密保護が厳重すぎる。ここまで厳重だと、なんかヤバいことでもやってんじゃないかって勘ぐりたくなるレベルだ。
 実際にやってるけどな。リズの拉致監禁とか。

 半ば呆れながら、決められた通路に従って案内ロボットの後に続く。ロボットは手前の建物に入ってすぐのエリアにオレを促した。
 面会用のエリアは殺風景な白い空間にいくつかのテーブルと椅子が点々とある。そのエリアの一番奥に男がひとり立っていた。

 男はオレと目が合うと、無表情なアイスブルーの瞳を微かに細めて口を開いた。

「お待ちしていました。シーナ」
「どうも」

 身長百八十センチ、アッシュブロンド短髪、上下黒のスーツ。
 人工知能がメモリに記憶されたデータと照合し、九十八パーセントの確率で一致を示す。
 こいつがリズを連れ出した奴だ。

 柔らかな物腰とは裏腹に、こいつも局長のグリュデ同様に感情が読めない。感情のない冷たいアイスブルーの瞳は、穏やかな笑顔に反してちっとも笑っていないし。