サラサラと髪を撫でられる感覚に、オレは意識を取り戻した。だがまだ視界は真っ暗で体はピクリとも動かせない。目も開けられないのだ。
バッテリ充電量は十五パーセント。こんなに低下したことないから、どこまで回復すれば動けるのかはわからない。
どうやらオレが消滅することなく、バッテリ交換はうまくいったようだ。
さっき髪を撫でたのはリズだろう。皮膚の修理は終わったのかな。時間がどれだけ経ったのかわからないので気になる。
バッテリの充電が進むに連れて停止していたセンサ類も徐々に起動し始める。どうせ出動命令はないんだし、充電が完了するまで人間の頃を思い出して惰眠を貪るのも悪くないな。
まぁ、厳密な意味では眠ってないんだけど。
目も開けずにそのままぐうたらモードに突入したとき、鼻先に湿った冷たいものが触れた。
リズの指? なわけない。明らかに湿気が多すぎる。
怪訝に思って目を開くと、目の前にあった顔からいきなり舌が伸びてきて口元をペロリと舐めた。
「うわっ! ちょっ、それはヤバいってリズ!」
飛び起きて叫ぶオレに、冷ややかな声が頭の上から降ってくる。
「私のわけないでしょう? なに考えてんのよ、エロボット」
「あれ?」
ムッとした表情のリズが両手に抱えているのは、あの爆弾を内蔵していた猫型ロボットだ。相変わらず緊張感のない表情でオレの方に首を伸ばしながら「にゃあ」と鳴く。
「……おまえだったのか。腹の中はきれいにしてもらったのか?」
オレが頭を軽く叩くと、猫は目を細めてもう一度「にゃあ」と鳴いた。やっぱり脳天気な奴だ。



