犯人が特定できたことは班長にとっても喜ぶべきことだと思うが、どうして一段と不愉快そうなんだろう。

「そういうわけで、シーナ」
「はい?」

 突然呼ばれて面食らったオレは、思い切り間抜けな顔で声を漏らす。いかんいかん。ロボットらしく冷静にしてないと。

 二課長は人の良さそうな笑顔を向けてオレに言う。

「ラモットくんをしっかり守ってやってくれ」
「了解しました」

 そういうことか。そりゃあ班長が不愉快MAXになるわけだ。

 犯人の居場所はまだ掴めていない。当面は機動捜査班の出番はなさそうだ。二課長が今後の捜査方針と役割分担を説明しているとき、すでに耳慣れてしまったメッセージが会議室に流れた。


——緊急指令。警察局宛に爆破予告声明を受信。ターゲットは第一居住地区のテルム男爵家私設美術館。一般捜査三課及び爆発物処理班は直ちに現場に急行してください。


 どうやら特務捜査二課担当の事件ではなさそうだ。一瞬全員が固唾を飲んでスピーカーを見つめたが、お呼びでないとわかると平然と元に戻る。
 リズに聞いてはいたが、研究室以外だと他の緊急指令も流れるんだ。

 班長銃撃事件の方は犯人の居場所が特定されるまでは一般捜査一課と協力して捜査を進める方針のようだ。オレは二課長の命令でラモット班長が警察局の建物を出るときは護衛を務めることになった。
 昨日の帰りと今日の朝は、一般捜査一課の捜査員が車で班長を送り迎えしたという。警察局の車両はオレのボディと同じくらい丈夫にできているらしい。