「へぇ〜知らなかった…絵、見ていいか?」

椿はそう言うと、絵のセッティングをする春日の後について行った。

「まぁいいけど…」

春日は描きかけのキャンバスをイーゼルに立てかけると、椿に見せた。

「おぉ…すごいな」

椿はその絵に感心すると、言葉を続けた。

「…何かモチーフと違くねぇか?」

「言うと思った…そこ突っ込まれると、困るんだけど…」

明らかに絵に描かれているものと、組まれたモチーフの数や配置が違っている…

「いいんだよ、椿…見たまんま、描かなくてもさぁ」

そう言いながら現れたのは、顧問の榎本だ。

「え、いいんですか?」

「い〜のい〜の…自由に描きゃ〜い〜んだよ…オレが組んだモチーフだっていうのもあるが、描きたくね〜もんは、描かなくたっていいんだよ」

「そ〜ゆう訳だから。椿、あっち行ってて」

春日はそっけなく椿を追い払うと、制作に取りかかった。

予備校通いで、部での制作日数が限られているため時間は少しでも惜しいのだ…