心を全部奪って

真っ青な空の下、カキーンカキーンと甲高い音が鳴り響いている。


バッティングセンターなんて生まれて初めて来たけど、結構人が多いのね。


「霧島さん。

さっきからいい当たりですね」


フェンス越しの通路から、霧島さんに声をかけた。


「あぁ俺、中学高校と野球部だったから」


「へぇ…」


そうなんだ。


だからこんなに上手なのね。


野球部っていうイメージは全然なかったけど。


「あー、スッキリした」


額の汗を手の甲で拭いながら、フェンスの中から出て来る霧島さん。


あれだけ当たれば、確かに気持ちが良いだろうなあ。


「お前もやってみろ」


「えっ?

わ、私はいいよー。

一度もやったことないし」


「一番スピードの遅いやつなら、なんとかなるって。

ほら、入れ入れ」


「えー!やだー」


嫌がる私なんておかまいなしに、強引にソフトボールと書かれたブースに私を押し込む霧島さん。


ぶぅと頬を膨らしたまま、立てかけられたバットを手にして、しぶしぶバッターボックスに立った。