心を全部奪って

止め処なく涙を流す私を、霧島さんが優しく包んでいる。


何も聞かずに


一緒に夜景を見てくれている。


工藤さんとは出来ないことを、


霧島さんがしてくれている。


なんだか不思議な気分だった。


怖いと思っていたのに。


弱みを握られて、奴隷になれだなんて言われていたのに。


もしかして、優しい人なの?


そう錯覚してしまいそうなほど、


私の肩に置かれた彼の手は、


とてもとても温かかった。


誰にも言えない秘密の恋。


ずっと孤独に耐えて寂しかった心が、


少しだけ軽くなったような気がした。


霧島さんと見た東京の夜景は、


私の寂しい心を癒してくれるような


そんな美しい景色だった。