そう、本当に訊きたいことは別にあった。
 「あの」
 確信に似た安堵感に背中を押されるように、紅葉はさっきから気になっていたことを聞いてみようと、おずおずと切り出した。
「さっき、蒼太に聞いたんだけど、お母さん……いや奥さん亡くなったって」
 初対面なのに不躾なことを聞いているのは分ってる。
 それでも、やはり。
 紅葉が予想したとおり。熊蔵は嫌な表情を浮かべることもなく、ごくごく普通に頷いた。
「……ええ、もう十年たちますかね。蒼太はまだ今の緑くらいで、緑はまだ一歳にもなってなかった」
 熊蔵は少し遠くを見るような目をして答える。そんな熊蔵の様子に、ほっと安堵を覚え、紅葉は思い切って言葉を繋ぐ。

 一番気になっている。
 多分、とても大事なこと。









「蒼太が言ったんです。自分が死なせたって……どういうことですか?」